騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

自分が自分でいられること

 

この本をはじめて読んだのは

小学校5年生の時。

この頃の私にとって黒柳徹子は、

“TVに出てるちょっと変わったおばさん”

という認識だったから

このおばさんのこどもの頃の話は

面白そうだと思ってこの本を買った。

 

小学校を退学になったトットちゃん。

トイレの汲み取りの穴に飛び込んだトットちゃん。

どのエピソードも面白くて、

いわさきちひろの絵も可愛くて

すぐにこの本が大好きになった。

 

トットちゃんが通うトモエ学園にも憧れた。

教室は電車で、席が決まってなくて

自分の好きな学科を優先して学ぶ。

お昼は、講堂に集まって

ワイワイ楽しく

海のものと山のものを食べる。

 

トットちゃんとは対象的な給食時間だった私。

一言もしゃべるなと言われ

アルミ食器のカチャカチャする音が響く教室で

食べ合わせを無視した空腹を満たすだけのエサ。

不味いコッペパンとマーガリンを

黙々と飲み込んだ。

 

私の担任は

厳しいルールでこどもを縛り付けるのが

最良の教育だと信じている、

当時でも時代錯誤な先生様だったので

学校生活はとても窮屈だった。

 

だから

こどもを規則で縛り付けない、

トモエ学園が羨ましかった。

大人から冷たい目で見られることもある

トットちゃんに

「本当はいい子なんだよ」と言ってくれる

やさしい先生がいるトモエ学園は、夢の世界だった。

               

夢物語に浸っていたいから

何度も読んで汚れて黒くなった本。

あまりに汚いので文庫本に買い替えたが

いつのまにか手放していたから

Kindle本を購入した。

そして今更に

エピソードの面白さもさることながら

それだけじゃない、

この本が世界中で読まれる理由がわかった。

 

現代からは想像ができないほど

のんびりしている東京の風景。

こどもがこどもらしく

外を駆け回る日常。

平和な生活を脅かす戦争の恐怖。

小児麻痺やLD、ADHDといった

障害のあるこどもの教育の難しさ。

そして

自分が自分でいられることの尊さ。

 

個性が大事、多様性の重要さを叫びながら

それを汚物のように排除する社会に生きていると

ちょっとでも人と違う自分を認められず、

自分で自分を責めて

自分が大嫌いになって苦しくなる。

 

でもそれは違うよと

自分が自分でいることは間違ってない。

自分の一番の味方は、自分なんだよと

この本は言っている。

小難しい心理学本を読んだり

自己肯定感とかわかりにくい言葉を使わなくても

自分が自分でいられることの尊さを

優しく教えてくれる。

だからこの本は世界中で愛される。

 

初読から40年経って

50代になってやっとそれに気づいた私。

もう二度この本を手放さないと決めた。