騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

男は老いて神となり、女は老いて妖怪となる

狙われた身体 病いと妖怪とジェンダー 安井眞奈美 著 

 

「妖怪とジェンダー」この言葉を見た時、何かが私の中で合点して

ジェンダー=得体のしれない異性の性質と読み解けば

妖怪に女性が多いのもわかると本を読む前から妙に納得した私。

雪女、姑獲鳥、砂かけばばあ、人魚、お歯黒べったり、

口裂け女、お岩さん、貞子(妖怪か?)等々。

実際は性別のない(わからない)妖怪の方が多いだろうが

なんとなく、幽霊、妖怪、妖精は女性のイメージが強い。

 

                                                 


引き換え「神」は男性のイメージ。

イエス・キリストブッダアッラー、オリンポスの神々、七福神

女の神様もいるけれど圧倒的男率の高さ。

 

ジェンダーとは性別に基づいた社会的属性・役割・相互関係を意味するが

私は女性への性差別・男尊女卑と同列の言葉として捉えている。

それは間違いとわかっているが、男性優位の社会に生きる女性の一人として

その考えはどうしても拭えない。

 

本書を開いて見れば、私の想像したような内容で非常に興味深く読み終えた。

妖怪の話が期待したほど出てこないのがちょっとがっかりだが

女性は「女性」というだけで死後、成仏できないとか

出産や月経による血の穢れのため死後、血の池地獄に墜ちるとか

日本中、いや世界中で女性を蔑む風習・習慣が根強くあることに

嫌悪感と不快感で気持ちが悪くなる。

 

宗教的に女性を蔑むことは当たり前な常識となっているが

女性を男性より劣った性とすることで

男性優位の社会を築いてきた男による男のための男に都合の良い「常識」だ。

でもそれって男性が女性を恐れるが故の裏返しのマウントじゃないのか。

 

自分と違う性を恐れず、尊重し認めることができないのが

男性の男性らしい特徴かもしれないが・・・どんだけ女が怖いのだ。

 

しかし、そんな男性より劣るとされている女性の体が狙われる。

不治の病を治す薬として胎児の生き血を求めて、

母親のお腹を裂き、胎児を取り出す。

出産で母子共々死んだら、その墓を荒らし、胎盤や臍帯を盗む。

妊娠中も死後も狙われる女性の体。

女性の身体の価値は高いが女性という性は蔑むべきもの。

なんか矛盾を感じるは間違いだろうか。

 

うっかり外で昼寝すれば女性器に蛇が侵入し、

妊娠すれば生きたままお腹を割かれ、

死んだら胎盤を盗まれ、老いれば妖怪となる。

 

女性に生まれたというだけでどれだけの業を背負わされているのやら・・・