騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

9月になると思い出す

今は手放してしまったけど、毎年9月になると思い出す絵本。

 

九月姫とウグイス  

文 サマセット・モーム  訳 光吉夏弥  絵 武井武雄

 

持っていた頃は、季節の絵本を玄関に飾るのを楽しみにしていて

なかでもこの絵本はお気に入りだったから

早くこの絵本を飾りたくて9月になるのが待ち遠しかったくらいだった。

まあ、9月以外に飾ってもいいのだけど、

なんとなくそういう「季節感」は守りたくて。

今年も9月になって、やっぱりこの本を思い出したので図書館で借りてきた。

 

タイトルに「九月」があるが9月という時節には全然関係ない物語だ。

九月という名前も9番目に生まれたからというだけで9月とは関係ない。

どこかで聞いたことあるような物語。

心優しい九月姫と意地悪な姉たちのやりとりと九月姫とウグイスの心温まる交流。

想定通りに物語が進んで終わる。

強く印象に残る物語ではないと思うのだがなぜ、

毎年9月になると必ず思い出すほど心に残っているのか。

 

九月姫」という言葉に惹かれるのが理由の一つ。

月姫や七月姫はあんまりかわいくないけど九月姫は断然かわいいと思うのだ。

字面もかわいい。

翻訳本なのであくまで日本語ならでは感想にはなるが。

 

そして心惹かれる理由のもう一つが武井武雄の絵であるということ。

好きな作家。とくに「ラムラム王」が好き。

ラムラム王の絵とはタッチが違うけど九月姫の絵も好き。

初版は1954年だが今見ても絵に古くささがない。

かわいいというより、モダンでおしゃれ。

きっと武井武雄の絵はいつの時代に見てもそうなのだと思う。

 

武井武雄の絵だから私はこの絵本が好きなのだろう。

別の人の絵だったらそもそも手にとってない気がする。

 

久しぶりに絵本を眺めていたらラムラム王も読みたくなってきた。

あ~それより長野県にあるイルフ童画館に行きたくなった。

武井武雄の絵を展示している美術館、これまで2回行った。もちろん一人で。

遠いので気軽には行けないけど私のお気に入りの場所だ。

行きたいな~行こうかな~

鬱から復活して元気になったことだし、働いてるから金もあるし。

 

 

男は老いて神となり、女は老いて妖怪となる

狙われた身体 病いと妖怪とジェンダー 安井眞奈美 著 

 

「妖怪とジェンダー」この言葉を見た時、何かが私の中で合点して

ジェンダー=得体のしれない異性の性質と読み解けば

妖怪に女性が多いのもわかると本を読む前から妙に納得した私。

雪女、姑獲鳥、砂かけばばあ、人魚、お歯黒べったり、

口裂け女、お岩さん、貞子(妖怪か?)等々。

実際は性別のない(わからない)妖怪の方が多いだろうが

なんとなく、幽霊、妖怪、妖精は女性のイメージが強い。

 

                                                 


引き換え「神」は男性のイメージ。

イエス・キリストブッダアッラー、オリンポスの神々、七福神

女の神様もいるけれど圧倒的男率の高さ。

 

ジェンダーとは性別に基づいた社会的属性・役割・相互関係を意味するが

私は女性への性差別・男尊女卑と同列の言葉として捉えている。

それは間違いとわかっているが、男性優位の社会に生きる女性の一人として

その考えはどうしても拭えない。

 

本書を開いて見れば、私の想像したような内容で非常に興味深く読み終えた。

妖怪の話が期待したほど出てこないのがちょっとがっかりだが

女性は「女性」というだけで死後、成仏できないとか

出産や月経による血の穢れのため死後、血の池地獄に墜ちるとか

日本中、いや世界中で女性を蔑む風習・習慣が根強くあることに

嫌悪感と不快感で気持ちが悪くなる。

 

宗教的に女性を蔑むことは当たり前な常識となっているが

女性を男性より劣った性とすることで

男性優位の社会を築いてきた男による男のための男に都合の良い「常識」だ。

でもそれって男性が女性を恐れるが故の裏返しのマウントじゃないのか。

 

自分と違う性を恐れず、尊重し認めることができないのが

男性の男性らしい特徴かもしれないが・・・どんだけ女が怖いのだ。

 

しかし、そんな男性より劣るとされている女性の体が狙われる。

不治の病を治す薬として胎児の生き血を求めて、

母親のお腹を裂き、胎児を取り出す。

出産で母子共々死んだら、その墓を荒らし、胎盤や臍帯を盗む。

妊娠中も死後も狙われる女性の体。

女性の身体の価値は高いが女性という性は蔑むべきもの。

なんか矛盾を感じるは間違いだろうか。

 

うっかり外で昼寝すれば女性器に蛇が侵入し、

妊娠すれば生きたままお腹を割かれ、

死んだら胎盤を盗まれ、老いれば妖怪となる。

 

女性に生まれたというだけでどれだけの業を背負わされているのやら・・・

 

 

わたしも眠れないのぉおおお

あたし、ねむれないの 

カイ・ベックマン作 ペール・ベックマン絵

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                   

図書館で「あたし、ねむれないの」という絵本を見つけて、速攻借りた。

私のことやん。って思って。

デフォ不眠症な私。

「あたし、ねむれないのぉおおおおお!!!!」と叫びたいくらい眠れない。

 

              

 

リーセンはお人形がないと眠れないから

おかあさんを呼んでお人形を持ってきてと言う。

「お人形がいないとねむれない。」

 

私はお人形がそばにあったら存在が気になって余計に眠れなくなるから

お人形持ってきてとは言わないけど(一人暮らしだし)

「眠れないの、毎晩眠れなくて辛いのぉ。」って誰かに言いたい。

言ったところで眠れるわけじゃないけど言いたい。

 

リーセンのお人形は、くまがいないとねむれないと言う。

くまは、いぬがいないと眠れないと・・・

いぬは・・・・。                        

 

みんなどれだけさびしん坊なんだか。

ぼっち好きな私にはよくわからない感情だけど、

みんながベッドに並んでいる絵はとっても微笑ましくてなんか嬉しくなった。

 

おそらくベックマンの絵本は初見だと思う。

ひねったところのない単純な文章とかわいい絵でとっても気に入ったので

ミニマリストに憧れてる私だけどそばに置いておきたいと思った絵本だ。

 

 

そっくりな絵本 

とんでもなく暑いので目だけでも涼しくなろうと

図書館で「雪」の文字の入った絵本を探した。

で、借りたのが「ゆきのひのおくりもの」。

この絵本は、うつになって物を捨てまくる前に持っていて

お気に入りでよく部屋に飾っていた絵本だ。

 

               

 

私が持っていたのとは本の大きさ、表紙のデザインが違うし、

タイトルもなんか違うような気もするけれど、

絵とあらすじは同じだからセンダックの絵本みたいに出版社が変わったのだろう。

と思って家に帰って読んだのだけど、なんかちょっと違和感。

しっくりこないのでAmazon

「ゆきのひのおくりもの」を検索してみるもやっぱりこの絵本。

 

タイトルが違うのかもと、昔、持っていた絵本のタイトルを必死に考えて

「しんせつ」という言葉が入ってたことを思いだし検索したら出てきた。

「しんせつなともだち」という絵本。私が持っていたのはこっちだ。

やっぱり、出版社が変わってタイトルを変えたのか~とよくよく見てみると、

なんと作者も挿絵画家も別人! まったく別の絵本、国も違う。

 

「ゆきのひのおくりもの」はフランス。

「しんせつなともだち」は日本。

あらすじはほぼ同じ、ディティールの違いはあるけれど

うさぎの絵なんて、そっくりどころかまったく同じなのにこれってどういうこと?

どちらかがパクったとしか思えない。

年代が古いのはフランス。ということは・・・?

パクったんじゃなくて、影響を受けて描いたってこと?

いやいやいやいや・・・それにしてはそっくりすぎる。

これって本当にどういうことだろう?

 

 

 

読みくらべ

「まどのそとのそのまたむこう」

大好きなモーリス・センダックの絵本。

この絵本の絵をかわいいと思う人は少ないかもしれない。

どの絵も暗く、写実的なようでいて現実離れしていてとってもセンダックらしい。

一番可愛いはずのあかちゃんがとっても不気味なところも好き。

 

お気に入りの絵本だったのだが病んだ時に手放してしまったので

また欲しくなってAmazonで検索して驚いた。

絶版になっていたのは想定内だが同じ絵本がタイトルを変えて出版されていたのだ。

しかも、超絶ださいタイトルになっていた。

「父さんがかえる日まで」

ダサすぎる・・・絶句した。

こんなタイトルをつけた出版社や翻訳者に怒りを覚えた。

 

もちろん買う気は失せた。

わたしがほしいのは「まどのそとのそのまたむこう」だ。

と、買わずにいたものの気になっていた。

翻訳本は訳によってだいぶ印象が変わる。

二冊の読み比べがしたい。

図書館のHPを検索したら別々の図書館にあったので図書館をはしごして借りてきた。

 

                

 

「まどのそとのそのまたむこう」

文章は、詩的で抽象的な表現で文字数は少ない。

 

「父さんがかえる日まで」

絵の場面をしっかりと説明するような文章で文字数も多い。

子どもに読み聞かせするにはこちらが向いているのかも。

子どもがこの絵を好むかどうか微妙だが。

 

私は「まどのそとのそのまたむこう」の方が好きだ。

訳が詩のような感じなので絵を自由に解釈できる。

反面、「父さんがかえる日まで」は、

訳が説明文のようなので絵の解釈の余地がないというか、

文章に頭がもってかれてしまう。

どちらがいいとかの話ではなくあくまで私の好み、印象だが。

 

2冊を読み比べると当然、原語で読みたくなってくる。

どちらの訳が原語に近いのだろう。

果たして、私の英語力で読めるだろうか。

絵本ならなんとかなる?

 

ちなみに英語のタイトルは「Outside Over There」

「まどのそとのそのまたむこう」が意味は近い。

「父さん」なんて言葉、原語タイトルのどこにもない。

 

 

 

 

 

パンはしあわせの食べ物

ジオジオのパンやさん  岸田衿子作  中谷千代子           

 

大好きな絵本「ジオジオのかんむり」は

読み終わった後、やさしい気持ちになれるが

王者の老いと孤独がテーマになので悲しさや切なさもある。

しかし、この本(絵本というには分厚い)のジオジオにはそんな哀愁は微塵もない。

かんむりではなくコック帽を被ったパン屋のジオジオの表情は明るく優しい。

王であるがゆえの厳しさもない。

             

              

 

パンを作るのが大好きで毎日いろんなパンを焼くジオジオ。

しまうまパン、きりんパン、どせいパン。

どんなパンをやこうかなと考えるのも楽しみ。

 

ぱたん ぱたん きゅっ きゅっ 小麦をこねる。

ちぎってまるめて焼く。

ほかほかのパン。

焼きたてのパンのにおい。

胸いっぱいに吸い込みたくなる。

 

村の動物たちはジオジオのパンが大好きで

こどもたちは、おまけにもらうパンをとっても楽しみにしている。

ひこうきパン、さかなパン、ひなぎくぱん。

 

ぱたん ぱたん きゅっ きゅっ 小麦をこねる。

ちぎってまるめて焼く。

ほかほかのパン。

おいしいパン。

 

ジオジオには夢がある。

パン屋の隣にサンドイッチとお茶をだす喫茶店をつくること。

それを知った村の動物たちも大喜び。

おいしいパンとお茶とやさしいジオジオのいる店。

 

              

 

私はパンが大好きだ。

パン屋の前を通るだけでしあわせな気持ちになる。

なんなら「パン」という文字だけでもちょっと浮き足立つくらいパンが好きだ。            

 

労働で疲れた会社の帰り道、

パン屋が並んでる通りを歩く時だけはしあわせを感じる。

そこを通り過ぎて、混み混みの電車に乗らなきゃいけないとしても。

 

昨今とかく悪者にされがちなパン。

グルテン、糖質、炭水化物!

体にとっていい食べ物じゃないのはどうやら事実らしいけど

パンは確実に人(動物も)をしあわせにしてくれる。              

 

 

かわいさに心が和む

せかいいちのいちご 

林 木林 作  庄野ナホコ 絵

 

森のくまさんといちごの絵ならそんなに違和感を感じないが

氷の国に住むしろくまがいちごを大事そうにみつめいている表紙絵は

ちょっと意外で目に止まった。

 

        

 

絵本をめくってみれば「かわいい~♪」って言葉しか

でてこないくらいかわいいの連続。

花のチョーカーやブレスレット、アンクレットでおしゃれしてるしろくま

いかにも女の子って感じでわかりやすく可愛い。

乙女ゴコロがキュンキュンする可愛さ。

 

たった一粒届いたいちごに大喜びしていちごを窓辺に飾って眺めたり、

枕元に置いていちごの香りに包まれて眠ったり、

外国製の高価なお皿にいちごを乗せておしゃれした友達といちごを楽しむ。

猫脚のバスにピンクのソファ、いたるところピンクで着色されたページが

私のほとんど枯れてしまった「かわいい」を愛でる気持ちをふわっと蘇らせた。

 

        

 

絵本を見た時、一瞬、

「あれ? しろくまカフェしろくまくん?」って思ったけど全然違った。

間違えてごめんね。と謝りたくなるくらい違った。

 

もちろん「しろくまカフェ」のしろくまくんも大好きだけど

彼はかわいいというか、だまってればかわいいのだけど、

口をひらくとかわいくないというか、ダジャレ王?

まあ、そこが彼のチャームポイント(?)でもあるけど、

いわゆる「かわい~♪」ってキャラじゃない。

と、話がそれた。

 

この絵本のあらすじは、

しろくまがいちごを楽しむというシンプルなお話だけど

絵のかわいさに心が和んだ一冊だった。

図書館で借りて1週間、なんども手にとって絵を眺めている。