かわいそうな私。
2才の時、お母さんがガンで死んだ。
だからお母さんのことは覚えていない。
いつも憂鬱なお父さん。
オブライエンさんがよく言う。
「かわいそうなアミーリア」
両親が “夫婦の絆をたしかめあうプログラム” に参加するために
ルイーズのところに預けられたケイシー。
二人とも喧嘩に忙しくて息子のことを忘れてる。
よりによって多感な思春期に
親の離婚、再婚問題が浮上するのは何故だろう。
親に逆らっても結局、親の都合に振り回されるこども。
傷ついてそれでも乗り越えようと未来を見る。
とんでも事件がおこるわけではない。
思春期の少女と少年のある春休みの出来事を綴った物語。
やわらかくゆるやかな文章で
ついつい、親の勝手も肯定してめでたしめでたしと
さわやかな気持ちで本を閉じてしまった。
完璧な親などいない。
親もまた、悩み苦しみ傷ついてるのだからと。
だけど、ちょっと待て。
親は子に対して責任がある。
母親が死んだことすら理解できない幼い娘がいるのに
愛する伴侶を亡くしたかわいそうな自分を慰めるのに精一杯で
育児は他人任せな父親なんて自己中過ぎないか。
子どもを守るためと言って嘘をつく親。
「お前を傷つけたくないから」なんて嘘を正当化させる常套句だ。
子どもを傷つけたくないのではなくて、自分が傷つきたくないだけ。
自己保身に走ってるだけではないのか。
アミーリアが言う「私を言い訳にしないで」
やがて全部、思い出になるだろう。
でもそれは、決していい思い出ではない気がする。
複雑で厄介な大人の世界の扉をあけた日の思い出かな。
本の装丁が可愛くて一目惚れして買った。
カバーをめくったら、さらに可愛いイチゴの絵。
ゆるやかな物語と可愛い装丁でお気に入りの一冊になった。