騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

わたしは大丈夫という呪文

レモンの図書室     ジョー・コットリル著

本が大好きなカリプソはいつも一人。

でも大丈夫、ひとりでも幸せだ。

ママが子供のころに読んでいた本に囲まれて幸せ。

自分の一番の友だちは自分、頼りになるのは自分の強い心だけ。

そうパパに教えられて生きてきた。

「他人はいらない」

「もしパパになにかあっても大丈夫だ、お前には人一倍強い心があるんだから」

 

パパはママが死んで悲しくて心が壊れてしまった。

その壊れた心はどこかに仕舞って鍵をかけた。

そして「パパは大丈夫だからカリプソも大丈夫だ」と言って

カリプソの存在を忘れるようになった。

 

               

 

この物語は、近年社会問題になっているヤングケアラーを題材にした話だが

私は、カリプソカリプソのパパから発せられる言葉

「私は大丈夫」「頼りになるのは自分だけ」

「他人はいらない」「心を強く持て」

これらの強気な言葉にほろっと涙が出そうになった。

 

辛い時、苦しい時、悲しい時、私が自分に言い聞かせてきたまさにその言葉ばかり。

他にも色んなバリエーションで自分に言い聞かせてきた。

「自分の味方は自分だけ」

「どんな悪(苦しみ、悲しみ)も命まで奪いはしない」

「人間は孤独が当たり前」

と、突き詰めればどの言葉もその意味の根っこは同じだ。

 

これらの言葉を頭の中で反芻し、どんなことも一人でなんとかしてきた。

頼れる、甘えられる人間のいない私。

「私は大丈夫」と何度も何度も自分に言い聞かせる。

まるで呪文のように。

 

                

 

カリプソはまだ子供なのに自分とパパの世話をして、

それを隠しながらなんとかやってきたけど

ある日友達のメイに全部知られてしまう。

本当は全然大丈夫じゃない自分を。

でもメイはそんなことで怯んだりしなかった。

「全然大丈夫じゃない」カリプソとパパを(も)ちゃんと受け止めくれた。

よかったね~と思う・・・けど

 

現実はこんな簡単じゃない。

友達だと思って愚痴って相談したら、

「そんなの皆同じ、いちいち文句言うな」と言われる始末。

「自分で選んだ人生でしょ」

「自分で決めたことでしょ」

「そうなったのはあなたが悪いから」

すべては自己責任らしい。

ぼっちも自己責任、貧困も自己責任、

死別のシングルマザーでも自己責任。

子がいないのも、子を大学に行かせられないのも、家が借りれないのも、

パワハラもセクハラもマタハラも・・・

「私は大丈夫」って呪いをかけて生きるしかないじゃん。