騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

夫婦だから似てるのか、似てるから夫婦なのか

アッホ夫婦  The Twits     

f:id:brubebe:20220108175234j:plain

タイトルがアレだし、ダールなので

他の人があまり書かないようなことを

書いてるんだろうなとは想像した。

が、不潔な夫婦の吐き気がするほどの不潔っぷりに気持ち悪くなり、

不潔夫婦の騙し合いと不愉快ないたずらを

ずっと読まされるのはかなわないと本を閉じそうになった。

想像してたより胸糞悪い。

 

しかし、それはダールの狙いのようでもある。

人間は、性悪で意地悪になると外見がこんなにも

醜くなると言っている。

美醜とは容姿の造形をさすのではなく、

心根の美しさ醜さのこと。

f:id:brubebe:20220108175234j:plain

性悪夫婦は、お互いに罵り合い、騙し合っているが

その性悪、意地悪と言う共通点で実は固く結束している。

なので、その意地悪が外に向かうと容赦ない。

自分たちの利益の為なら他人がどうなっても構わない、というか

他人を慮る頭を持ち合わせていない。

 

だけどこの夫婦、基本的にアホなのでその意地悪も詰めが甘い。

そこを意地悪をした相手に出し抜かれ、

まんまと仕返し、それもえげつない仕返しをされる。

読んでる私も溜飲が下がってスッキリする。

f:id:brubebe:20220108175234j:plain

ダールの作品には毒がある。

悪が善人のフリをしていない。

つまり、悪は悪い顔をしているのでわかりやすい。

物語の最後には、悪にとことん罰が下る。

言ってみれば、勧善懲悪。

だけど、テレビの時代劇にみる勧善懲悪と違うのは、

善人の方にもモヤっとする悪があるところ。

この物語の仕返しだって、そこまでする?ってくらいだし、

「マチルダ」も悪の両親と校長を追放したのは、

彼らがいなくなることが自分の大きな利益につながると

計算していたような節もある。

             f:id:brubebe:20220228174835j:plain

そこがダールらしい毒で魅力だし、私がダールを好きな理由。

だけど本作に限っては、

不潔が過ぎて気持ち悪くなるので

何度も繰り返し読めるかって言うとそれは微妙。

未来をみる

かわいそうな私。

2才の時、お母さんがガンで死んだ。

だからお母さんのことは覚えていない。

いつも憂鬱なお父さん。

オブライエンさんがよく言う。

「かわいそうなアミーリア」

 

両親が “夫婦の絆をたしかめあうプログラム” に参加するために

ルイーズのところに預けられたケイシー。

二人とも喧嘩に忙しくて息子のことを忘れてる。

 

よりによって多感な思春期に

親の離婚、再婚問題が浮上するのは何故だろう。

 

親に逆らっても結局、親の都合に振り回されるこども。

傷ついてそれでも乗り越えようと未来を見る。  

             f:id:brubebe:20220312161003j:plain

とんでも事件がおこるわけではない。

思春期の少女と少年のある春休みの出来事を綴った物語。

やわらかくゆるやかな文章で

ついつい、親の勝手も肯定してめでたしめでたしと

さわやかな気持ちで本を閉じてしまった。

完璧な親などいない。

親もまた、悩み苦しみ傷ついてるのだからと。

              f:id:brubebe:20220312160703j:plain

だけど、ちょっと待て。

親は子に対して責任がある。

             

母親が死んだことすら理解できない幼い娘がいるのに

愛する伴侶を亡くしたかわいそうな自分を慰めるのに精一杯で

育児は他人任せな父親なんて自己中過ぎないか。

 

子どもを守るためと言って嘘をつく親。

「お前を傷つけたくないから」なんて嘘を正当化させる常套句だ。

子どもを傷つけたくないのではなくて、自分が傷つきたくないだけ。

自己保身に走ってるだけではないのか。

アミーリアが言う「私を言い訳にしないで」

          f:id:brubebe:20220312160634j:plain

 

やがて全部、思い出になるだろう。

でもそれは、決していい思い出ではない気がする。

複雑で厄介な大人の世界の扉をあけた日の思い出かな。

                f:id:brubebe:20220216174528j:plain

本の装丁が可愛くて一目惚れして買った。

カバーをめくったら、さらに可愛いイチゴの絵。

ゆるやかな物語と可愛い装丁でお気に入りの一冊になった。

ヘルジャパン

日本に住む女性で

一度もハラスメントを受けたことがない人がいるだろうか。

セクハラ・パワハラモラハラ・マタハラ・・・・

「いい奥さんになれるよ」

「あなたはみたいに私は強くない」

「悪気はないんだから許してあげたら?」

「最近の若い奴は、根性がない」

「冗談なのに、何まじになってんの?」

                f:id:brubebe:20220305210627j:plain

私が無職なのは、会社でのパワハラが原因だ。

パワハラによるメンタル崩壊→休職→退職→無職・通院中。

人事部に相談したが何も変わらなかった。

パワハラ加害者、すなわち

社内でパワーの大きい人、権力を握ってる人・・人事部も逆らえない。

 

誰の目にも明らかなハラスメントをするバカは少ない。

当人だけにわかる嫌がらせをする。

三者には、ハラスメントには見えない。

ハラスメント加害者がのさばり、

被害者が、糾弾、誹謗、中傷されるヘルジャパン。

            

パワハラ真っ最中、

20代、30代のセクハラ真っ只中にこの本に出会っていたら。

「言葉の護身術」を知っていたら。

bot返し、エジソン返し、明菜返し、ハシビロコウのような真顔・・・

本書は、大笑いしながら読める上に活用できる護身術が満載。

             f:id:brubebe:20220305212142j:plain            

ハラスメントをうまくかわす方法を教える本ではない。

ハラスメントは、笑顔でかわすものじゃない。

ハラスメントされたらちゃんと怒る。

間違ったことをしていると相手にわからせる。

怒るべき時に怒らないと自分の権利は守れないと言っている。

               

自分の意見を言う女がバカを見るヘルジャパン。

男に媚びる概念のなかった私は、

無愛想、可愛げがない、嫁に行けない等々言われ続け、

予言通り(?)50過ぎても独身だ。

反対にいつもニコニコ、

セクハラも笑顔でかわした同僚は、20代で結婚した。

 

嫌なことをされても嫌と言わず、

“うまくかわすのがデキル大人” なんて大間違い、

ハラスメントから逃げてるだけだ。

笑顔で加害者の気分を良くさせるからハラスメントがなくならないのだ。

それは、ハラスメント加害者と同罪だ。

                f:id:brubebe:20220305210627j:plain       

現在、私が社会人になった頃よりマシになったのは、

ハラスメントと戦う人がいたからだ。

笑顔で流さす、NOとはっきり言い、行動した人のおかげだ。

 

私が会社に入って最初に覚えたのは、

部長の湯呑とコーヒーの好み。

朝の上長へお茶出し、昼食後の食器洗い、ゴミ集め、

女性社員だけがやらされた。

今じゃこれはセクハラだと誰もが認識する時代になったが、

古いジェンダー観に支配されて苦しむ女性が多いのは

ジェンダーギャップ指数120位ヘルジャパンのヘルジャパンたる所以。

 

この本をハラスメントに苦しむ人、いや、

ハラスメントに無関心な人こそ読んでほしい。

なんなら国家予算を使って配布してほしい。

まあ、

男の既得権益を守るための男尊女卑、家父長システムを脅かす要素は

権力じじいが必死で排除するだろうけど。

            f:id:brubebe:20220305212142j:plain              

やられたらやり返す

 

小さな女の子にしかすぎないマチルダ

ひどいことをする自分勝手で理不尽な大人に、

きっちり仕返しをするのが清々しく爽快な物語。

 

金とTVに生きる世俗的で下品なワームウッド夫妻。

我が子に何の興味も持たない最悪な親。

そんな親元に生まれた天才マチルダ

             f:id:brubebe:20220228174835j:plain

親のせい、育った環境のせいにして哀れんでひねくれるのは簡単だが

チルダは、生まれた環境を悲観して投げやりになったりせず

その頭の良さで打破していく。

バカな親とは早々に見切りをつけ、自分に見合う環境を手に入れる。

血縁だからとしがみつかないところが良い。

生物学的上のつながりが必ずしも最良ではないとマチルダはわかっている。

  f:id:brubebe:20211220160342j:plain           

親が手続きを忘れたせいで遅れて入った学校は、

校長のミス・トランチブルが支配していた。

ミス・トランチブルの楽しみは、

子どもを投げ飛ばすこと、こらしめること、いじめること。

子ども嫌いで暴力的で残忍なミス・トランチブルの理想は

“一人も生徒のいない学校“

なぜ、学校の校長をやってるのだろう。

 

チルダは暴力にも屈しない。

暴力に怒りが頂点に達し、超人的な力を身に着けて

ミス・トランチブルにみっちり仕返しをする。

f:id:brubebe:20211220160342j:plain

大人に仕返しをするなんて悪い子だと批判する人がいたら、

そいつこそ悪い人だ。

大人はいつも正しくて、子どもは未熟だからそれが理解できないのだと

思っているなら、それは傲慢だ。

“ 罪を憎んで人を憎まず ” が信念なら頭がお花畑だし、

“ どんな悪人も許す心の広いやさしいワ・タ・シ♪ “ 自己陶酔型も

頭に花が咲き乱れてる。

f:id:brubebe:20220210180115j:plain

 

過去に受けた教師や親の理不尽な言動への心のくすぶりが

大人になった今でも残っている。

チルダの仕返しでとそのくすぶりがちょっと浄化されてスッキリする。

私の代わりにじゃんじゃんやってくれ!

 

嬉しいことに映画化されてるので

その昔、TV放映やレンタルビデオで何度も見たが

日本語訳があるのはVHSだけで

DVDは何故か日本語訳がない。

アマプラにもない。

ネトフリや他のネット配信にあるだろうか。

とりあえず、インゲンが食べたい

サリーおばさんとの一週間 ポリー・ホヴァース

THE TROLLS       Polly Horvath

f:id:brubebe:20220222224830j:plain

急病になったベビーシッターの代わりに

メリッサ、アマンダ、フランクの家にやってきたサリーおばさん。

サリーおばさんの語る、面白くて不思議な話に魅了される子どもたち。

でもパパは、姉のサリーに来てほしくなかったみたい。

 

インゲン、否、ゼンマイの話をするサリーおばさん。

インゲンを指ではさんで回転させ、はしから食べる。

インゲンを口のはしから突き出した牙みたいにして食べる。

子どもたちが嫌いなインゲンを食べながら語られるのは、

ゼンマイの話だけど皆、インゲンに釘付けだ。

        f:id:brubebe:20220222224859j:plain

子どもたちに負けず劣らず私もインゲン欲が高まって早速スーパーに行った。

が、インゲンの値段の高さにおののいて買えず。

食べられないとなると増々インゲン欲がふくらんで、

普段は買わない冷凍のインゲンを買った。

袋の半分を蒸して食べた。

インゲンってこんなに美味しかったけ?

冷凍インゲンを3袋ストックしている。

f:id:brubebe:20220222224830j:plain

ルイ叔父さんは本当にトロルを見たのか。

海岸を漁る魔物。「くれたものは返さないよ。」

犬を海岸に置いた人、4人の奥さんを海岸に置いた人、

子供を引きずって海辺に置き去りにした人。

 

そんなに怖がらなくても大丈夫。

トロルが人間に近寄ってくるわけじゃない、

人間の闇が人間をトロルの所に連れて行くのだから。

 

サリーおばさんが語る摩訶不思議で楽しい家族の話と相反して、

パパとサリーおばさんのぎこちない態度。

バラバラな家族。

それは、ジョンとエドワードとサリーがロビー(パパ)にしたことの結果。

 

現実的に、いつでも仲良しこよしの家族なんてあるのだろうか。

何の問題もなく、不変の愛情と信頼で結ばれた家族・・・

「それは家族ファンタジーだ」と思う私がひねくれてる?

 

家族という密な人間関係に潜む闇。

裏切られた信頼は、二度と戻らない。

恐ろしいのものは、人間の内側に住んでいる。

トロルは人間の心の闇の象徴なのかもしれない。

               f:id:brubebe:20220222232902j:plain

Polly Horvathの書く物語は、

児童向けだからとハッピーエンドにするのではなく、

かと言って、救いのない終わりでもなく。

現実の闇や残酷さを抜いた“きれいなだけの物語”にしてないところが好きだ。

f:id:brubebe:20220222224830j:plain

魔女になりたい

魔女のイメージ。

黒マント、三角帽子、おばあちゃん。

ほうきに乗って空を飛ぶ。

大釜で何かをぐつぐつ煮る。

黒猫、カラス、杖、呪文、魔法。

               f:id:brubebe:20220212154409j:plain        

魔法が使えるようになりたいと何度願ったことか。

苦しみを与えたい人間が少なからず2人、3人、あー5人はいる。

殺しはしない、楽に死なせてたまるか。

死なない程度の苦しみを

生きるのを止めたくなる苦しみを100年くらい味あわせてやる。

                f:id:brubebe:20220212154426j:plain

“小さい魔女”は、たった127才の気のいいおばあちゃん。

おしゃべりなカラスと森奥深く小さな家で暮らしてる。

1日6時間の魔法のおけいこ。

怪我を治すために薬を作る。

杖を振ってチチンプイとはいかないらしい。

ほうきは人間の店で買う。

キキは自分で作って、ハリーは魔法使いの店で買う。(プレゼントだった?)

ワルプルギスの夜とブロッケン山は、この物語の中だけのものと思っていた。

“魔女の薬草箱”から

ワルプルギスの夜は、魔女と悪魔が集まって大騒ぎをするという言い伝えで

ブロッケン山は、ドイツに実在すると知った。

 

ほうきが空を飛ぶのではなく軟膏で空を飛ぶのが事実(?)らしい。

空飛ぶ軟膏を体に塗ればいいので、ほうきじゃなくて豚でも雄羊でもいい。

(って、道具無しで体だけで飛べるじゃん。)

軟膏を塗って全裸でほうきに跨り、ブロッケン山に行く。

全裸で踊り明かすワルプルギスの夜サバト

           f:id:brubebe:20220212154508j:plain

アメリカ映画「ウィッチ」のワンシーン。

全裸で空中に浮かぶ魔女たち。

脈絡なく全裸なので意味がわからず謎だったが数年越しで解けた。

                 f:id:brubebe:20220212155303j:plain

16世紀のヨーロッパでは、魔女の存在は周知の事実だった。

魔女を恐れるあまり、魔女狩りという大虐殺が行われたのは有名な史実。

薬草の知識があれば魔女。

赤ちゃんの死産は魔女である産婆の仕業。

バター作りに失敗すれば「家の前を通った女が呪いをかけた」と

たまたま歩いてただけで魔女。

都合の悪いことは全て魔女の仕業、運悪くそこに居ただけで魔女にされる。

 

魔女狩りは、作り話ではなく人間が行った愚かで残虐な大量殺人。

16世紀から進化していない現代人も同じ過ちを犯す可能性が

十二分にあ・・ホロコーストだ。

ファンタジーでメルヘンなおとぎ話をふんわり思い浮かべて

“魔女になりたい”なんて夢見がちに言えない。

           f:id:brubebe:20220212154643j:plain

バカって何回言った?

バカの研究  ジャン=フランソワ・マルミオン編 

 

世を賑わすおバカなニュース。

理解し難いおバカな言動。

何でそうなるのかと首をかしげるばかり。

 

ふざけた本ではなく一流の科学者や大学教授らが

真面目にバカについて考察した本。

一言で感想を言うなら「面白い!」

 

ここでいうバカとは、IQが低い、勉強ができない、無知ではない。

高学歴な人、国のトップや企業のお偉方、

一般的に偉いと言われる人達の信じられないバカな発言。

誰しもあるはず自身のおバカな行動、こういうバカのこと。

こういうバカの正体を認知バイアスの心理と言動、

ネット社会の功罪、SNSによる拡散、伝染、その他多方面から論じている。

f:id:brubebe:20220108175234j:plain

私なりにバカについて考えた時ダニング・クルーガー効果を思い出した。

バカはバカであるが故に己のバカにさえ気づけないという心理現象。

ブスが自分を本気で美人だと信じているのもこれらしい。

 

かつて職場にいた、どう贔屓目に見ても美人とも可愛いとも言えない容姿の女。

自分は可愛いと心の底から信じてるようで服装にその自信があふれ出ていた。

よくモテエピソードを語っていた。

池袋を歩いただけで男に囲まれて困った ←芸能人でも無い限り人は群がらない

過去の彼氏は全員年下でイケメン ←誰も知らない過去

明らかな嘘と突飛な服装が面白くて皆に笑われていた。

バカ故に自分を客観視できない。

こんな素敵な私を笑う人は、私に嫉妬してるだけ私が羨ましいだけ・・・・

バカって幸せだ。

f:id:brubebe:20220210180115j:plain

この程度のバカなら害はない(面白い)のでほっとけばいいが

有害なバカは問題だ。

有害なバカは人を疲弊させ苦しめ社会を破滅に導く。

破滅に向かってもバカはバカ故にそれに気づかない。

都合の悪い真実に全力で目をそむけ、

都合の良い事実(嘘)を信じ、これこそ真実だと大声で主張する。

f:id:brubebe:20220108175234j:plain

バカの表現だけで名言集ができる。

何でも信じるバカ、あなたの仕事についてあなたに説明しようとするバカ、

バカは自らの素晴らしさを誇張する、バカは衰えない、知的なバカ、壮大なるバカ、

バカの名人芸によって尊敬と賞賛を集めるバカ(トランプ)、

バカは真実に関心がない、うぬぼれバカ、その日1日のベストバカ・・・

 

一番笑ったのは、

本書の企画を知った人は皆、ドナルド・トランプについて書くと思ったってこと。

バカ=ドナルド・トランプって世界共通認識らしい。

 

初めてトランプを見た時その下品さに絶句した。

あれが大統領になるわけない、

アメリカ国民もそこまでバカじゃないって思ったよね。

一昔、二昔も前のタフガイを体現したじじい。

金と地位と権力とトロフィーワイフ・・・ダサッて思うのは私だけじゃないはず。