騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

奪われる思考と自由

動物農場  ジョージ・オーウェル

 

前知識がなくタイトルから牧歌的な物語だと思っていた。

例えば、ケネス・グレーアムの“たのしい川べ”のような。

違った、全然違う、違いすぎる。

他のジョージ・オーウェル作品を読んでいれば想像ついたかもしれない。

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人間と戦い、革命を起こし自由を手に入れた動物たち。

低俗な人間とは違う。

動物主義、七戒、不動の法律、崇高な理念。

「四本脚は良い、二本脚は悪い」

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過酷な労働とひもじい生活は終わり、

働かずに安楽に暮らせる自由な生活を手に入れた。

スノーボールとナポレオンは革命の指導者でスクィーラーは同士だったはず。

共に革命を戦い生き抜いた同士。

 

いつの間にかナポレオンの独裁国家

口のうまいスクィーラーによって行われるプロパガンダ

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いつも腹ペコで豚だけが太ってるけど

ひもじくて寒くて、眠ってなくてたいてい働いているけど

昔は、今よりもっと酷かったじゃないか。

だって昔は、奴隷だった。

でも今は、自由の身なのだ!

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やはり無知は罪だと思う。

字が読めないから書きつけた七戒が変わっても気づかない。

小難しい言葉と根拠ない数字で動物農場の繁栄を“立証”されて鵜呑みにする。

 

そして。

飢餓が思考を奪う。

思考できないから洗脳される。

恐怖が記憶をすり替える。

我らが指導者ナポレオンはすべて正しい。

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恐怖政治がどのように始まっていくのか。

独裁者がどうやって生まれるのか。

なぜ独裁者を崇拝するのか。

社会主義国家から独裁国家へ。

 

全体主義社会主義共産主義。違いがよくわからない。

だが、独裁への変貌は思ってるよりたやすいものなのだと恐怖を感じた。

日本は一応、民主主義の看板を掲げてるが

実情は、社会主義だと言う話もある。

世界で唯一成功した社会主義国家。

成功の秘訣は、国民に思考させないことだろうか。

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逆境にめげない孤児、古典少女文学のセオリー

私好みなタイトルと表紙絵。

りんごが大好きな私は、“りんご”に引っかかる傾向がある。

原題は「Understood Betsy」

直訳するなら「理解されたベッツイー」か?

可愛くないね。

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孤児のベッツィーが引きとられた先で

周りの大人に影響され影響し、成長する物語。

古典少女文学の定番。

古典少女文学に親しんでる人はデジャブ感満載だ。

孤児の少女の物語と言えば

赤毛のアンが有名。

他にもエミリー、メアリー、セーラ、ポリアンナ、ジュディetc.

 

赤毛のアン

赤ちゃんの時に両親を亡くし、孤児院を出たり入ったり

愛情に飢えた子供時代。

間違って送られたクスパート家で愛情と家族を得る。

 

本書、9才の孤児ベッツィー。

アンと同様、赤ちゃんの時に両親を亡くすが

フランシスおばに引き取られ、何不自由なく育つ。

愛情深く生真面目なおばの過保護、過干渉で

神経質で臆病で病弱、甘やかされた都会っ子になる。

メアリーにちょっと似てる。

まあ、メアリーは親の育児放棄が原因だけど。

ベッツイーと暮らせなくなったフランシスに変わり

バトニー家で暮らすところからベッツイーの成長が始まる。

 

想像通りバトニー家は、ど田舎の農家。

都会とは違う、蜜で濃い人間関係、不便な生活。

洋服を着せてくれる“ねえや”はいない。

厳しい自然環境とたくましい人間に揉まれて

ベッツイーは子供らしい自我のある少女に変わる。 

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想像通りの物語。

ハラハラドキドキはない。

これぞ私が求める少女文学。   

しかし不思議だ。

ベッツイー、アン、セーラ、ポリアンナ、物語の核が似ている。

孤児の少女が逆境にめげず、たくましく生きる。

作品が発表された時代も近い。

一番古いのは、多分セーラ。

作家が他の作品に影響された可能性もある。

史実に興味がないので推測だが、

孤児が沢山いる時代背景によって必然的に生まれた物語かも。

      

もしくは、女性の地位が低く自由がなかった時代、

女性を少女(こども)に置き換えて

自由に発言させ冒険させて

擬似的に楽しむ人が多かったのかもしれない。

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貧困と馬鹿の罪

  

フランダースの犬を久しぶりに読んで号泣した。

何度読んでも号泣だ。

今回読む前に西原理恵子の「この世でいちばん大事なカネの話」を読んでいた。

だから貧乏と無知について深く考えてしまった。

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ネロの祖父、ジェハン・ダースは極度に貧乏だ。

食べ物が十分にあったことは一度もない。

何も食べない日もある。

そんな家にネロは引きとられた。

80才過ぎた老人とこどもの超絶貧乏暮らし。

自力で抜け出す方法があるだろうか。  

現在、日本でも貧困の連鎖が問題になってる。

親が貧乏なら子も貧乏、抜け出せないループ。

 

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ネロには優しい祖父とパトラッシュと言う親友もいた。

暴力は受けていない。

でも。

祖父が死んで、家賃が払えず住む家を失った時

村人は助けなかった。

村の金持ちのコゼツがネロを無視してる。

ネロを助けて、コゼツの怒りを買うようなことになったら大変。

コゼツ=金 には逆らえない。

金を失う恐怖。

村中から無視される、これも暴力。

 

貧困と暴力は仲良し。

ギリギリの生活が人を追い詰める。

些細なことでイライラする。

怒りと恐怖は、弱者に向かう。

 

家と保護者を失った少年を放っておいたらどうなるか。

無知からくる暴力。

思考力と想像力の欠如した馬鹿な頭。

 

無知と馬鹿は、罪。

教育が必要だ。

学校で学ぶこと。

 

高学歴な人が偉い、優秀だと言うのではない。

高学歴な馬鹿は沢山いるし、奴らは扱いに困るし

高学歴な馬鹿は、最強の害悪。

政治家、公務員に多そう。

 

教育って、脳みそを鍛えることだと思う。

自分で考える脳みそを育てる。

自分の知らないことが世の中に沢山あると知る。

知らないことを知ろうとする、考える脳みそを育てること。

 

  ※高学歴の馬鹿とは、

  暗記力は優れているが、自分の頭で考えることができない人。

 

無知と馬鹿にならないための教育。

教育が必要だとわかっていても教育に回す金がない。

生きるだけで精一杯なのだから

学校に行く金があるなら、米を買う。

そりゃそうだ、食べなきゃ死んでしまう。

だから教育が受けられない。

無知は無知のまま、馬鹿は馬鹿のまま。

貧乏思考。

狭い世界でぐるぐる回る。

自力では抜けられない負のスパイラル。

貧しさに飲み込まれる。

貧困が無知と馬鹿を生み

無知と馬鹿が貧困を繰り返す。

 

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コゼツが自分の馬鹿に気付いていたら

コゼツの妻に夫に怯えない心と知恵があったら

村人にもうちょっとの金と思考する頭があったら

ネロは、10代で飢餓と寒さで死ぬことはなかった。

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ドリトルは、「お金なんて面倒だ」と言った。

お金は人間を支配する。

お金は人間の生き方を決めてしまう。

確かに、面倒だ。

でも面倒と言えるのは、貧困を知らないからかもしれない。

人なんかより、動物のほうがいい・・・でも

動物と会話できる医者ジョン・ドリトルと動物の冒険物語。

いわゆるGift的能力で動物と会話ができる人、

ある日突然、動物の言ってることがわかるようになった人が

ドリトル先生だと思っていた。

映画はそうなっていたような。

                   

原作はそうじゃなかった。

ドリトルは勉強して会話できるようになったのだ。

鳥語、犬語、猿語、etc.

すごい。

動物の種類の数だけ言語がある。

ひょっとしたら人間以外の

動物間共通言語なるものがあるかもしれない。

物語のポイントは、そこじゃないけど

何年も勉強して

毎日、海外ドラマで英語を聴いても

英語がわからない私は、そこに感動。

 

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「ちゃんとした人なんかより、動物のほうがいいな」とドリトル。

私も同じ気持ちだ。

人間嫌いの私。

嘘と欲でパンパンな人間より動物がいい。

犬と猫にまみれて暮らしたいといつでも思ってる。

                 

でも人間と犬は、会話できない。

だから人間は、犬の気持ちを推し量る。

犬が何を訴えているか考え、想像する。

不平不満を言えない犬がいじらしい。

彼らは態度で示す。

拗ねて言うこと聞かないとか、たまらなく可愛い。

 

しかし、もし犬と会話できるようになったら

人間同士と変わらない関係になるのではないだろうか。

言葉による誤解や齟齬も生じるだろう。

口喧嘩もできる。

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私はそれでも人間より動物の方がいいと思うだろうか。

犬が言った言葉で傷つくのだろうか。

その言葉で病むのだろうか。

人間のような下心がないし

嘘という概念もないから

犬と会話できても傷つけられることはないのか。

 

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さらにドリトルは言う。「お金なんて面倒だ。」

ドリトルは、お金がなくてもなんとかなると呑気。

反対に一緒に暮らす動物がお金の計算をし、

これじゃ生活できないとあせって

その特徴を活かしてドリトルを助ける。

 

人間の国では、お金無しでは何一つ手に入らず、

何も出来ず、生きていけない。

チンパンジーの大将が言う。

「そんな国に誰が住みたいもんか。ばかげた話だ!」

ああ、その通り!

お金なしで自由に暮らせたらどんなにいいか。

 

「人なんかより、動物がいい」と

ドリトルが言えば重みがある。

しかし、人間の友達も動物の友達もいない

私が言うとなんか、うーん・・・

 

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人間は、都合よく現実を変える

変身  フランツ・カフカ 

 

ある朝、目覚めると虫になっていた男。

グレゴールは、

虫になったことより仕事に遅刻したことにパニックを起こす。

我が身より仕事。

     

なんとか汽車に乗らなければ。

店の支配人を説得し、

故意にさぼってたわけじゃないと理解してもらわなければ。

自分が養っている両親と妹。

店に借金がある。

自分が働かなくては、たちまち家族が路頭に迷う。

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記憶と感情はそのままで虫になったグレゴール。

ちゃんと話してるつもりでも

大きな虫が音を出してるだけにすぎない。

 

なぜ、虫になったのか。

人間に戻れるのか。

嘆き、怯えながら

家族は、グレゴールが快適にいられるようにと世話をする。

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どんな生活でも人間は慣れる。

最初の衝撃が去ると、

稼ぎ頭を失った一家の生活が問題になる。

虫より生活。

 

仕事に精魂すり減らし、過労の家族。

“虫”の世話をする時間がどこにある。

広すぎる家から引っ越したいが、“虫”をどうする。

下宿人に“虫”が見られた。

賃貸料は払わない、損害を受けたから賠償を請求すると言う。

 

あれは、グレゴールではない。

もしグレゴールなら、

家族のことを思って自分から家を出ていくはず。

虫けらが下宿人を追い出し、家を占領して

私達を路頭に迷わせようとしている。

 

人間の脳は、生存に都合のいい思考をする。

生存は最優先事項。

家族、愛情、絆・・・

命を前にかすんでしまう、儚いもの。

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~余談~

蜘蛛になる男の話と思い込んでいたが

毒虫と書いてあって何の虫かはわからない。

・・・虫は大嫌い(><)

 

新しい誕生日を迎えたら

月あかりの中庭  立原えりか  1987年

12篇の短編からなる童話集。

日常の不思議な話というより、ファンタジー&メルヘン色が強い。

 

<新しい誕生日>

この寓話に出会えただけで満足。

他はいらないかも。

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もうすぐ60才の独身のはるな。

「楽しいこと何一つなくて年をとってしまった。

なんでそうなったかわからない。」

 

ああ、その通り。

なんでそうなったかわからない。

気づけば独身、いつも一人。

明確に意図的にそう生きている人もいるだろうが

大半は、気づくとそうなっていた。

これがホントのところだと思う。

少なくとも私はそう、気付いたらいつも一人。

 

「人間に生まれてきたのに人間の仲間入りができない。」

 

人間なのに、人間が苦手、人間が嫌い、人間が怖い。

誰と居ても、どこに居てもAway感。

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そんな、はるなに(私に!)救いの言葉。

「そんな人達は、新しい誕生日を迎える。願っていたものに生まれ変わる誕生日。」

 

新しい誕生日なんて考えたこともなかった。

願ったものに生まれ変わる日。

 

もし来世があるなら

金持ちに飼われる猫になりたいと常々思っていたが

いざ真面目に(?)考えると、もう哺乳類は嫌だと気付いた。

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動物も属してるグループでのコミュニケーションが必要。

ましてや、飼い猫飼い犬となったら人間のご機嫌もとらなきゃならない。

あ~嫌だ。

誰とも、何とも関わりを持ちたくない。

 

植物もいいけど、人から見られるのは嫌だ。

他と比べられるのはもっと嫌。

ずっとそこにいるのも飽きそう。

 

風がいい。

風になって好きなところを自由に漂っていたい。

誰にも見られず、比較されず、

まとわりつく人間もいない。

謂れの無い嫌がらせもない。

のびのびと好きなように好きなだけ吹いて、消えていこう。

あ~風になりたい。

新しい誕生日を迎えたら、風になると決めた。

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好きな世界を思い出させてくれた

 

児童文学の大大大ヒット作。

映画化される前から話題になってた。

どこの本屋でも山積みで

分厚い本にも関わらず売れていた。

ひねくれてる私は、当然のようにスルー。

流行りものは興味がわかず、

まれに手にしても好みじゃないことが多いからだ。

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どんなきかっけで読んだのか覚えていないが

読んだ時の衝撃は、忘れない。

 

頭をガーン!とやられた感じ。

これだこれだ、私が好きなのはこれだ。

こんなに好きな世界を忘れていたなんて。

魔法使い、マント、小鬼、空飛ぶほうき、百味ビーンズトロール・・

目が覚めたような、

凝り固まっていた殻が割れて外へ飛び出したような。

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物語に吸い込まれた。

夢中になって本を読むなんて久しぶりだった。

 

小さい頃から活字好きで、

本を読むのは、ご飯を食べるのと同じくらい日常だった。

漫画は禁止だが、本は好きなだけ買ってくれる親。

時が経つのを忘れて本にのめり込んで、叱られることもしばしば。

 

大人になると本に夢中になれず、気が散りまくっていた。

大人は子供と違って、

色々やらなきゃいけないこともあるから仕方ないと思ってた。

 

大人は、大人の本を読むべき。

児童文学は、大人は読んじゃいけないと思い込んでた。

「漫画やアニメは子供が見るもの、大人が見るのはオカシイ。」と言う

両親に洗脳されてたのか。(子供の時も禁止だったけど)

 

それは間違いだとハリー・ポッターが気づかせてくれた。

好きな世界を思い出させてくれた。

好きな世界なら大人の今でも夢中になれる。

気が散漫だったのは、好きな世界じゃないからだ。

 

大人だって児童文学読んでいいんだと気付いてから、

子供の頃に読んだ本を買い漁る日々が始まった。

思い出の本を求めてあちこち行った。

懐かしくて面白くて楽しくて、もっともっと読みたい。

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そうやって集めた本は、今、手元にない。

うつを患った時、手放した。

本の世界と違って現実は苦しくて。

本は、所詮まやかし。

苦しみから救ってくれるわけじゃない、ただの紙切れ。

本を見るだけで涙が出て辛かった。

 

現在、うつと診断されてはいないが

何をしても楽しくないのは継続中。

もう、ずっとこのままだろう。

久しぶりにハリー・ポッターを読んだら

ワクワクして夢中になれた自分を思い出した。

 

ちなみにハリー・ポッターシリーズは読破してない・・・

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