騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

人間は、都合よく現実を変える

変身  フランツ・カフカ 

 

ある朝、目覚めると虫になっていた男。

グレゴールは、

虫になったことより仕事に遅刻したことにパニックを起こす。

我が身より仕事。

     

なんとか汽車に乗らなければ。

店の支配人を説得し、

故意にさぼってたわけじゃないと理解してもらわなければ。

自分が養っている両親と妹。

店に借金がある。

自分が働かなくては、たちまち家族が路頭に迷う。

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記憶と感情はそのままで虫になったグレゴール。

ちゃんと話してるつもりでも

大きな虫が音を出してるだけにすぎない。

 

なぜ、虫になったのか。

人間に戻れるのか。

嘆き、怯えながら

家族は、グレゴールが快適にいられるようにと世話をする。

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どんな生活でも人間は慣れる。

最初の衝撃が去ると、

稼ぎ頭を失った一家の生活が問題になる。

虫より生活。

 

仕事に精魂すり減らし、過労の家族。

“虫”の世話をする時間がどこにある。

広すぎる家から引っ越したいが、“虫”をどうする。

下宿人に“虫”が見られた。

賃貸料は払わない、損害を受けたから賠償を請求すると言う。

 

あれは、グレゴールではない。

もしグレゴールなら、

家族のことを思って自分から家を出ていくはず。

虫けらが下宿人を追い出し、家を占領して

私達を路頭に迷わせようとしている。

 

人間の脳は、生存に都合のいい思考をする。

生存は最優先事項。

家族、愛情、絆・・・

命を前にかすんでしまう、儚いもの。

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~余談~

蜘蛛になる男の話と思い込んでいたが

毒虫と書いてあって何の虫かはわからない。

・・・虫は大嫌い(><)