月あかりの中庭 立原えりか 1987年
12篇の短編からなる童話集。
日常の不思議な話というより、ファンタジー&メルヘン色が強い。
<新しい誕生日>
この寓話に出会えただけで満足。
他はいらないかも。
もうすぐ60才の独身のはるな。
「楽しいこと何一つなくて年をとってしまった。
なんでそうなったかわからない。」
ああ、その通り。
なんでそうなったかわからない。
気づけば独身、いつも一人。
明確に意図的にそう生きている人もいるだろうが
大半は、気づくとそうなっていた。
これがホントのところだと思う。
少なくとも私はそう、気付いたらいつも一人。
「人間に生まれてきたのに人間の仲間入りができない。」
人間なのに、人間が苦手、人間が嫌い、人間が怖い。
誰と居ても、どこに居てもAway感。
そんな、はるなに(私に!)救いの言葉。
「そんな人達は、新しい誕生日を迎える。願っていたものに生まれ変わる誕生日。」
新しい誕生日なんて考えたこともなかった。
願ったものに生まれ変わる日。
もし来世があるなら
金持ちに飼われる猫になりたいと常々思っていたが
いざ真面目に(?)考えると、もう哺乳類は嫌だと気付いた。
動物も属してるグループでのコミュニケーションが必要。
ましてや、飼い猫飼い犬となったら人間のご機嫌もとらなきゃならない。
あ~嫌だ。
誰とも、何とも関わりを持ちたくない。
植物もいいけど、人から見られるのは嫌だ。
他と比べられるのはもっと嫌。
ずっとそこにいるのも飽きそう。
風がいい。
風になって好きなところを自由に漂っていたい。
誰にも見られず、比較されず、
まとわりつく人間もいない。
謂れの無い嫌がらせもない。
のびのびと好きなように好きなだけ吹いて、消えていこう。
あ~風になりたい。
新しい誕生日を迎えたら、風になると決めた。