騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

貯金生活

れんげ荘   群ようこ著 ハルキ文庫           

有名広告代理店を45才で早期退職して

貯金だけで生活すると決めたキョウコ。

家賃3万円のボロアパートに引っ越し、

月10万円で慎ましく心穏やかに暮らす。

           

現在無職の私は、

主人公キョウコの貯金生活に親しみを覚える。

もちろん、自分で決断して無職になったキョウコと

思いがけず無職になった私とでは

心構えが全然違うのだが

会社という組織に馴染めなかった

独身無職のおばさん一人暮らしの心情に

共感するところも多い。

 

私は、会社の人間関係で病んだので

人間がうじゃうじゃいる組織に戻りたくないが

今は、傷病手当金でなんとか生活してるけど

キョウコのように8桁の貯金があるわけではないから

いずれは働かなきゃいけない。

 

それでも労働は最低限にして

家賃込み月10万円で暮らしたいと思っているが

果たして私もキョウコのように腹を括って

月3万円の木造ボロアパートに住めるだろうか。

シャワーとトイレが共同で隙間だらけの安普請、

害虫との共存生活。

生活音丸聞こえの住まいは、HSPの私には地獄だ。

 

地方に行けば3万円でも

もっといい所に住めるだろうけど

地方で独身無職の女が一人暮らししてたら

それはそれで何か面倒なことがありそうだ。

都会だからこそ、独身無職のおばさんが

目立たず暮らせている。

 

なんとか都会で安くていい物件を見つけたとして

健康体なら月10万円で暮らせるだろうが

長生きする気はなくとも

何かと病院通いが切れない私。

特に歯が弱くて自費診療も多いから

10万円なんて歯の治療代だけで消えてしまう。

               

実際、家賃込み月10万円で

生活している人もいるようだが

その人たちは、医療費はどうしているのだろう。

病気知らずの健康体なのだろうか。

そりゃ若いうちは病気のことなんて

考えなくてもいいけど確実に皆、老いる。

老いて体にガタがきたら

どこから医療費を捻出するのだろう。

 

他にも気になることはある。

大物家電が壊れたら?

PCが壊れたら?

スマホが壊れたら?

それらを買い直すお金がなかったら?

ネットがなくても暮らせるだろうが

情報社会においてネット無しでは、

たちまち情報弱者になりQOLも低くなってしまう。

               

つらつら考えるに、

貯金生活とは、億の貯金でもあれば

のん気に暮らせていいだろうが

そうでなければ、いつもお金のことを考える

お金に支配された窮屈な暮らしに思える。

 

・・! ここではたと気づいた。

貯金生活なんて夢のまた夢の話と思っていたけど

年金があてにならない将来、

国民のほとんどが否が応でも

貯金生活者になるんじゃないだろうか。

となると働けるうちは、嫌でも働いて稼いで

来るべき貯金生活に備えた方がいいってことか。