ある女の子のための犬のお話 ダーチャ・マライーニ著
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この本の「わたし」が関わった犬の物語集。
アイスクリームが好きな犬、文句ばっかり言う犬、飛ぶことが大好きな犬。
可愛くてちょっとおマヌケな愛すべき犬の
ほっこりする話ばかりの本かと思いきやそうではなかった。
犬の病気や死、人間の身勝手でゴミ箱や道に捨てられる犬の話が綴られていた。
おそらく著者の実体験ではないだろうか。
中でも犬の安楽死の話はドキッとした。
怪我や病気で死が確定した犬の飼い主に獣医が言う
「死なせてやりませんか?」
「楽にさせてやりましょう。」
それは苦しみを取り除くため、犬のためだからと飼い主も獣医の言葉に同意する。
私にこういった実体験はないけれど
愛犬の苦しみを取り除くことが飼い主にできる最良の判断だと今まで信じてきた。
悲しいけれど死を早めることは犬を愛する故のことなのだと。
けれどそれは偽善だとこの本の「わたし」は言うのだ。
苦しみたくないのは人間の方で
愛犬が長く苦しむ姿に直面したくないからそれを追い払っている。
犬は死なせてくれと頼んだわけでもないのに。
犬には犬としての生から死へ移行する時間があるのだ、
そしてそれは尊重されなければいけないと。
つまり人間の勝手で死を早めたり遅らせたりすることはできないのだと。
こういう考えを持ったことはなかったからう~んと考えてしまった。
犬が動物が喋らないから
容易く安楽死という言葉を発することができるのかもしれない。
人間の場合、本人が死なせてくれと言うことはあるが
医者が簡単に安楽死を勧めることはないだろう。
ましてや家族や近親者は、本人が苦しいから死なせてくれと懇願しても
なかなか了承できるものではない。
しかし犬の場合はそれがわりと当たり前に行われる。
それは犬の寿命を人間が掌握してるということにならないだろうか。
装丁の可愛さに惹かれて軽い気持ちで手に取った本だが
犬猫大好き人間大嫌いな私には、全然軽くない重い本だった。