騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

人間も動物も結局見た目

やさしいライオン  やなせたかし

 

やなせたかしと言えばアンパンマンを思い浮かべる人が多いだろうが

私は「やさしいライオン」と「チリンの鈴」、

この2冊の絵本を思い出す。

大好きで大事な2冊の絵本。と言っても手元にはない。

好きなら買って手元に置いておくべきなのだが

ここ10年ほど物を捨てたい病に罹患中で

病が悪化すると発作的になんでもポイポイ捨てしまう。

そうやって今まで何度も買っては処分しを繰り返しているこの2冊。

どうしても読みたくなったので今回は図書館に行った。

あいにく「チリンの鈴」はなかったので

「やさしいライオン」だけ借りてきた。

 

               

 

いつも震えているからブルブルと名付けられたみなしごのライオンは

ムクムクという名前のメス犬に育てられてとってもやさしいライオンになった。

体は大きくて立派だけどお母さんが大好きなやさしいライオン。

 

この絵本を読むたびに涙し、やるせない気持ちになる。

やさしいライオンですとどこかに書いてある訳でもない、

言語が通じ合えない猛獣、肉食動物が目の前に現れたら

力で劣る人間は、射殺という防衛手段をとるのは致し方ないことだ。

人間の住む街をライオンがうろついている状況も

人間が作り出したことだからライオンに罪はないのだけど。

 

人は見た目が9割と言うが動物にもそれがあてはまるようだ。

見た目より中身だよ!と偽善者は知ったふうなことを言うけど

超能力者じゃないんだから初対面で中身までわかるわけがない。

確実にわかる情報だけで相手を判断するしかない。

 

突如、目の前に猛獣が現れて

やさしいライオンかも?

人間を襲わないライオンかも? 

なんて推し量っている暇はないのだ。

 

でもでも、やっぱり悲しくなってしまう。

見た目で決めつけるなんて・・・。

 

猛獣じゃなくても大型犬というだけで怖がる人も多い。

私は、マスティフでもドーベルマンでも可愛くてたまらないが

それは無条件に犬が好きな犬バカで

犬を飼っていたこともあるからで

犬が身近でない人にとっては、

いかつい顔とでかい体の犬は猛獣と同じくらい怖いだろう。

そんな生き物が近づいてきたら

恐怖のあまり無用に逃げ、勝手に転び、

犬に襲われたー!なんて言うのかもしれない。

 

               

 

お母さんに会いたかっただけのブルブルも

そんな怯える人間に襲われた。

でも人間が100%悪いとも言えない。

 

悲しすぎるブルブルの生。

毎度涙しながらもムクムクを背負って空を駆けるブルブルの姿に

心が暖かくなるから何度でも読みたくなる。