騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

自然と感性

みどりのゆび モーリス・ドリュオン 

 

この本を読んでまず思ったのが

その世界観も登場人物の設定もまるで違うけど

バーネットの秘密の花園と似ているなと。

 

 

秘密の花園は、イギリスに住むネグレストされた子どもの頑なだった心が

草花にふれることで癒やされ

子どもらしい明るさと素直さを取り戻し成長する物語。

 

みどりのゆびは、チトという少年のみどりのゆびの力で

街のここかしこに草花があふれ

犯罪も戦争もなくなるという、いわばファンタジー

馬も喋るし。

 

2つの物語のどこを似ていると感じたのか。

それは自然の偉大さとSense of wonderの大切さを知れるところだ。

 

 

Sense of wonderを調べると

美しく神秘的な自然を素直に感じることの出来る感性とか

不思議な心理的感覚を表現する概念、それを言い表す言葉

とあって、まあわかりにくい。

感覚を文字で表現するは難しいし

英語の“Sense of wonder”を的確に言い現す日本語は無いので

Sense of wonderは訳さずに

英語のままで自分の中に落とし込むしかないと思っている。

私の理解が合っているかどうかわからないけど

この2つの物語に共通するのはSense of wonderだと思う。

 

Sense of wonderの感性があるからこそ

コリンとメアリは成長し、

チトの住むミルボワルの街から犯罪がなくなり、

チトのお父さんは、武器商人をやめて花を作ることにしたのだ。

Sense of wonderがなければどんなに花があふれても

何も感じずただの景色とするか

邪魔だとばかりに刈り取って

犯罪も戦争もなくなることはなかったはず。

美しい自然が目の前にあふれても

その感性がない人間には邪魔なだけで

邪魔な“モノ”を破壊することに躍起になる。

 

 

しかし、自然のチカラは強大で

人間には到底コントロールできない。

如何に科学が発展しようとも人智の及ばない領域は存在する。

知恵のある人間は忘れがちだが

人間もそこらに生えてる草花と同じ自然の一部でしかないのだ。

唯一無二の生き物ではなく命あるすべてのものが唯一無二の存在で

その生命に優劣はないから

自然を破壊した人間にそれ相応のことが起きるのは

当然と言えば当然で

昨今の地球規模の災害や病も

起こるべくして起こった人災なのだと思える。

 

普段は自分のことで精一杯でミクロな思考の私だが

この物語のおかげで珍しく自然の偉大さや

スピリチュアル(占いとかではない)的なことを考えた。

 

 

それにしても挿絵の素晴らしいことよ。

どの絵も大きくして額に入れて飾って毎日眺めたい。

もっと早くこの本を読めばよかったと後悔するくらい好きな絵だ。