騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

悪くない魔女

ラプンツェル  グリム童話 

塔に幽閉された髪の長いお姫様が王子様に助けられるお話だと

(ディズニー版は知らない)と思っていたが

そんなわかりやすい勧善懲悪な物語ではなかった。

  

 

そもそも、ラプンツェルはお姫様ではなく一般庶民だ。

つい童話に出てくる女の子は、

皆お姫様だと思ってしまうのはどうしてだろう。

 

それに魔女と言えば、悪者と相場が決まっているが

この物語にでてくる魔女を悪者とするのはちょっと可哀想だ。

たしかに物語上は、悪者として位置づけられているのだが

魔女のしたことは、我が子を大事に思う母親の

行き過ぎた行動にしか思えないからだ。

 

それよりも長い間子どもができなくて、

やっとできた娘を青菜(ラプンツェル)と引き換えにあっさり

魔女に渡す夫婦の方がよっぽど非人道的だ。

この夫婦はこれきり登場しないが

罰が当たってしかるべきはこの夫婦ではないだろうか。

 

 

夫婦から奪った赤ん坊を可愛がって育て、

12歳になった時に塔に閉じ込めてしまうのも

思春期の子どもを心配しすぎて、

厳しい門限を決める親と同じ心理ではないだろうか。

魔女を現代の超過保護な親に置き換えてみると

子どもにGPSをつけて行動を監視する親と変わりない気がする。

 

超過保護に世間から隔離して大事に育てていた娘を

ふらっとあらわれた男に奪われれば、

どんな親だって怒るし、親を裏切った娘を罰するだろう。

娘を砂漠に置き去りにするという罰は、やりすぎだが

大事に慈しんだ娘の裏切りへの怒りと悲しみがうかがえる。

 

それだけ怒ってるのに、

王子に罰を与えないのは不思議だけれど

ラプンツェルを失ったショックで

自ら塔から飛び降りて視力を失った王子を見て、

わざわざ罰する必要もないと思ったのかもしれない。

 

 

数年後、王子の子どもを産み育てていたラプンツェル

王子が再会し、(妊娠していたとはびっくりだ)

ラプンツェルの涙で王子の視力が戻って幸せに暮らしました。

となるのだが、その後の魔女の行方は知れず、

強引すぎるハッピーエンドに全然納得できない。

 

家庭菜園の青菜(ラプンツェル)を盗まれ、

大事な娘(ラプンツェル)も盗まれた魔女。

彼女が悪者扱いされる理由は何だろう。

魔女というだけで悪者にされるなんて、

これは魔女狩りを助長するための物語だったのだろうか。