騒音のない世界で本を読む

児童文学好きの読書日記

ピノッキオは果たして人間になりたかったのか 

ピノッキオの冒険 カルロ・コッローディ 著

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嘘をつくと鼻が伸びる、木で造られたあやつり人形の男の子。

なんやかんや冒険をして最後は、願いかなって人間になる。

原作を読んで自分の記憶がどっぷりDisney的ピノキオ物語だと驚いた。

Disneyのアニメは、見ていないにも関わらず

ピノキオと聞いて頭に浮かぶのはDisneyのピノキオなのだ。

恐るべしDisneyMagic!

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ジェッペット、善良で短気。

とんでもなく貧乏で、幸せで温和な老人というイメージと程遠い。

ピノッキオ、わがままで怠け者で誘惑に弱い、悪ガキ。

生みの父を蹴り飛ばし、家を飛び出して、追いかけてきた父は牢屋にぶち込まれる。

親切なコオロギ(Disneyではジムニークリケット)の忠告に腹を立て、

金槌で叩き殺す。

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幼さ故の無知と無邪気さを差し引いても、身勝手で愚かな馬鹿者。

一旦、改心するも誘惑に負け、人殺しに追われる。

助けを求めた家の蝋のように青白い顔の青い髪の少女。

「この家にはだれもいないわ。みんな死んでしまったの。」

「私も死んでいるのよ。」

まるで死の象徴のよう。

結局助けを得られず、首を吊るされ命を落とすピノッキオ。

 

実は、当初物語は、ここで終了だったらしい。

ピノッキオは、その未熟さ故にただ虚しく死ぬ。残酷さに満ちたおとぎ話。

なんとも暗い物語でこれが最初から子供向けに書かれていたとは驚きだ。

 

これで終わっていたら、Disneyアニメになることはなかっただろう、暗すぎて。

世界中で読まれることもなかっただろう。

ピノッキオと言えば、鼻が伸びる、最後は人間になるという

メインエピソードも存在しなかった。

青い髪の少女も大人にならず、再々ピノッキオを助ける神的存在にはならなかった。

 

だが読者の抗議により物語は続いた。

 

ピノッキオは、青い髪の仙女に救われ再度改心するが、また騙され金貨を失い、

誘惑に負けロバになって売り飛ばされ、海に沈められる。

何度目かわからないくらい悲惨な目にあって、

やっと心から改心し、人間の男の子になる。

と、「めでたしめでたし」だが。

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果たして人間になる意味は?

あやつり人形だが、自由に話し、笑い、動けるピノッキオが

人間になることは、ハッピーエンドなのか。

人間がしんどい私には甚だ疑問。

それこそ、ここからが不幸の始まりのように思える。

 

木に吊るされて救いもなく死んでいくあやつり人形が

生の虚しさを表しているようで

人間になってもその虚しさは、変わらないのでは。

否、人間なればこそ虚しさは増えるのではないか。

ピノッキオの冒険 (光文社古典新訳文庫)

 

余談。

Kindle Unlimitedにあったので読んだピノッキオの話。

ちょうど映画が上映されていたので観た。

原作に忠実。

衣装やデフォルメ、景色が美しく

大好きな映画「五日物語 3つの王国と3人の女」と雰囲気が似てるな~と

調べたら監督が同じだった!なんか嬉しい☆

イタリアのマッテオ・ガローネ監督。

YouTubeの映画の予告編は暗くて怖すぎ。

本編は、あんなに暗くない。

予告編が怖くて観るのをためらう人がいそうで心配になった。


www.youtube.com

 


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