小学校の図書室で借りていた。
転校前だから小学生の低学年。
何度も借りていた。何度も借りるくらい好きだった。
大人になってこの本のことは、うっすらしか覚えてなくて、
タイトルも内容もおぼろげ。
“ゆらりさん”とかいう名前のおばけが森に住んでいて。
本の表紙は、水色っぽくて・・。
物語より、何度も何度も読んだことを強く覚えていた。
ある時、本屋の児童文学コーナーを眺めていて見つけた。
見てすぐわかった。
「そうだ、森おばけってタイトルだった!」
手に取ってパラパラと拾い読み。
森に住んでるから森おばけ。
森に住めなくなって引っ越したのは、人間の小学校。
引っ越しは、くじらぐもに乗って。
ちょっとめくっただけで、「そうそうそうそう・・」と記憶が蘇る。
「ぐりとぐら」は読んだことないけれど。
もちろん即買い。
おばけの家族の話。
森おばけは、白くて小さくてハンカチみたい。
こっそり人間の小学校に住んでる森おばけ家族と人間の子どもの交流。
シンプルでやさしい物語。
怪談や怖い話の要素は、ない。
おばけが人間とかわらない家族生活を営んでいるのが面白かったのかな。
子ども時代に大好きだった本に再会した喜びを
なんと表現したらいいだろう。
なつかしい友に会ったようなとは、使い古された言い回しだが、
例えて言うならそんな感じだろうか。
しかし、私には懐かしむ友がいないので、いまいち現実味がない表現だ。
記憶の底に眠っているのに、
本を見た瞬間、一気に蘇る光景。
子ども時代の家、2DKの社宅。
マンガより本が好きな子どもだった。
本は、好きなだけ買ってもらえた。
本棚には、少年少女文学全集が揃っていた。
畳の上に寝っ転がって、夢中で読んだ。
暗くなっても気づかず、電気をつけず読んでいて
しょっちゅう、母親に怒られた。
「目が悪くなるでしょ!」 案の定、視力は悪い。
子ども頃好きだった本に再会すると
簡単に本に夢中になれた子どもの自分を思い出す。
不安や雑事に邪魔されず、一心不乱に物語の世界にのめり込んだ。
もうあんなに夢中で物語を追うことはできないから
一瞬でも、その頃の自分を取り戻せた気がして嬉しいのかもしれない。
森おばけは、子どもの自分に戻れる本だから
大人な私も大好きな本になった。