乙女チック。
陸奥A子の作品を乙女チックと言わずして何という。
とくに、80年代の作品は、乙女チックと可愛い(KAWAIIではない)が盛り盛り。
夢中だった高校生の私は、この中に住みたいと願った。
栄光高校に通う。
休みの日は、にんじんデパートで買い物。
まきこ堂のオルゴールと、手作り雑貨を部屋に飾る。
寒い冬は半纏を着て、馬男(子犬)と散歩に行く。
ギンガムチェックの制服で制服デート。
眼鏡かけた学者や研究者っぽい彼氏。
クラスメイトの伝言、公衆電話、駅で待ち合わせ。
奇をてらった話や描写はない。
初恋。片思い。一目惚れ。
相手を見かけるだけで嬉しくなって、目があったら真っ赤になっちゃう。
言葉を交わしたら、ドキドキが爆発しそうになる。
高校生の私。
近隣ではかわいいと言われる制服を着てた。
かっこいい男子が多いと言われるクラスにいた。
人生で一番デブ。
酷い乱視でビン底のような眼鏡。
恋とは、距離が遠すぎた。
当然、片思いも制服デートもなんにもなかった。
恋愛なんて、マンガやドラマの中のことと思ってたけど
同級生は、マンガのような恋愛をしてたみたい。
鈍い私は、気づかず卒業した。
陸奥A子のマンガのような可愛い恋は、大人になったら出来ない。
高校生の時に恋しとけばよかったとたまに思ったりするが
恋愛偏差値が低いというより、枯れてる私には
やっぱり無理な話。
私にはなかった青春と恋愛。
甘くて可愛くて切ない、胸がキュンキュンする恋。
昨今の漫画。
アニメ、萌えアニメ・・・。
デジタルできっちり描かれた線。
性的デフォルメされた女の子達。
気持ち悪くて吐き気がする私は、おかしい?
手書きの線はいい。
線に強弱があって、まっすぐだけど直線じゃない。
やわらかい筆の跡。
1と0の世界からはみ出た線。
陸奥A子の描く女の子と住む世界。
素朴で可愛くて純真。
性的なものは1滴も1ミクロンもない。
黒い下心、腹のさぐりあいも駆け引きもない。
安心して優しい気持ちでいられる世界。
大人になった私は、高校生の頃よりもっとこの中に住みたいと思う。