小さなパン屋を営む40歳で独身のミス・マーサ・ミーチャム。
貯金は2000ドルある。
マーサは、いつも売れ残りの値引きしたパンを買っていく客を
ちょっとした事から貧乏画家と思い込む。
服はヨレヨレだがとても礼儀正しい。ドイツなまりの中年男。
マーサは、自分の豊かな食事を見て思う。
貧乏画家の彼は、すきま風の吹き込む屋根裏部屋で
売れ残りの固いパンを食べている。
日に日にやせ細っていく。
私の美味しい食事を一緒にすることができたらいいのに。
才能ある天才の貧乏画家が
2000ドルの貯金とパン屋の援助を得たらどんなに喜ぶだろう。
「まぬけ!」
「ああ、ぞうだ。この、おぜっかいのおいぼれ猫!」
善意と恋心の暴走が行き過ぎる。
勘違いの思い込みとは、怖くて恥ずかしいもの。
事実を知ったマーサ。
男にとって、マーサは、取るに足らない日常の一部。
パン屋でパンを買い、ついでに店の主人とあいさつ程度の言葉を交わす。
それだけ。ただ、それだけの存在。
マーサが自分勝手に思い込まなければ、何も起こらなかった。
マーサにとっても、男にとっても悲劇。
マーサの心は、固くなってしまったかもしれない。
マーサは、これからも一人でパン屋を続けていくのだろう。
そして貯金をどんどん増やすだろう。
いつか本当に理想の男性が現れるかもしれない・・とは
もう考えたりしないだろうな。